第1回 人間の思考のクセを知ろう!
皆さんこんにちは!
Tib「♯人の行動を考えよう!」チャンネルです!
普段は心理学や行動経済学などを学んで人の行動の特徴を分析し、会社のビジネスにどう活かせるかを研究しています。
そんな私たちの連載第1回は、私たちの脳が持っている「思考のクセ」について、行動経済学の理論とともにお話ししたいと思います。
そんな私たちの連載第1回は、私たちの脳が持っている「思考のクセ」について、行動経済学の理論とともにお話ししたいと思います。
早速ですが、行動経済学の世界で有名なクイズを1問出題します!
Q.Aさんはメガネをかけ、気が弱く小心者。歴史本が大好きです。さて、Aさんの職業は「図書館員」と「商店主」、どちらの確率が高いでしょうか??
A.答えは商店主。世の中の図書館員の人数よりも商店主の人数の方がずっと多い。
よく考えてみると当たり前のような気もしますが、それでも一瞬、「Aさんは図書館員である」と思った方も多いのではないでしょうか?
また、「商店主」と答えた方の中にも、一瞬「図書館員」という答えが頭をよぎった方もいらっしゃるのではないでしょうか?
これは「図書館員に物静かで歴史本が大好きな人が多そう」という一般的なイメージから、皆さんの脳が無意識に「Aさんは図書館員っぽい」と判断して、図書館員である確率を高く見積もってしまったのです。
このように人の脳には、何かを判断する際に、過去の経験や価値観などを基に時間をかけずに答えを導きだすクセがあり、これを「ヒューリスティック」と言います。
Aさんの例では、複雑な問題に対して「典型的だと思うもの」「それっぽいと思えるシナリオ」を答えに転用する「代表性ヒューリスティック」が無意識に働いてしまったので、思考に偏りが生じてしまったのです。
ビジネス上の簡単な例だと商品の色がこれにあたります。食品が赤ければ「辛い」、茶色ければ「健康・オーガニック」のイメージがあるでしょう。また、パッケージが金色なら「高価・豪華」など、商品を詳しく観察しなくても見た目だけで中身の想像を膨らませてしまうことがよくあるかと思いますが、これも代表性ヒューリスティックの影響が大きいと考えられます。
ヒューリスティックを理解して夫婦ゲンカを回避!?
ヒューリスティックの例をもう一つ紹介するために、もう1問クイズです。
Q.飛行機の墜落率と、糖尿病による死亡率どちらが高いでしょうか?
A.糖尿病による死亡率
墜落率を答えに挙げた人もいらっしゃるかと思います。また、糖尿病による死亡率のイメージがつかなかった人も多いかと思います。
ここには、自分が思い出しやすいことの確率を高く見積もってしまうというヒューリスティックが働いており、これを「利用可能性ヒューリスティック」といいます。
飛行機の墜落は糖尿病による死亡よりもニュースになりやすく、人々にとっては「思い出しやすい」ものになるため、実際の確率よりも高いと思ってしまうのです。直近で墜落のニュースがあった後などはなおさら高く見積もることになるでしょう。
さて、ご結婚されている読者の方の中には「自分はこれだけ家事をやっているのに、相手は全然やってくれない」と夫婦ゲンカになった経験がある方もいらっしゃるかもしれません。
そんな夫婦ゲンカも、利用可能性ヒューリスティックで説明できます。
この場合、相手がサボっているのではなく、単にヒューリスティックが働いているだけの可能性があるのです。
というのも、自分が家事をした回数は100%わかるのに対し、相手のしてくれた家事の全てに気づくことはできません(気づかぬ間にお風呂掃除してくれていることもあるでしょう。)。
すると、利用可能性ヒューリスティックが働き、知らず知らずのうちに相手のしてくれた家事の回数を過小評価してしまいます。そして、結果として同じくらいの家事をこなしているのに、お互いが「自分より相手の方が家事をしていない」と錯覚しケンカになってしまうのです。
「自分ばかり損している…」などと思った時には利用可能性ヒューリスティックの存在を思い出すと、不要なケンカや悩みが減るかもしれませんね!
(ヒューリスティックのせいにして本当にサボってはいけませんよ!!)
あなたの脳が抱える様々なクセ
行動経済学の分野では、この他にも人間の様々な思考のクセが理論化されています。以下はほんの一例ですが、どれも「あるある」と納得してしまうものも多いかと思います。
●ヒューリスティックと認知バイアス
(例:「自分はあいつより努力しているのに全然評価されない」と悲しい気持ちになる)
●プライミング
(例:笑顔を作ると本当に気分が良くなる)
●認知容易性
(例:同じ内容でもフォントが読みやすい企画書の方がいい企画に見える)
●ハロー効果
(例:全く同じ話を社長がするのと新人がするのでは、受ける印象が全然違う)
●フレーミング効果
(例:「90%無脂肪」と「脂肪含有率10%」だと前者の方がダイエットに効きそうに感じる)
●アンカリング
(例:人が寄付する直前に「5ドル以上寄付する気がありますか?」と聞いた時よりも「40ドル寄付する気がありますか?」と聞いた時の方が募金額が大きくなる(前者では平均20ドルだったのに対し、後者ではなんと143ドルという実験結果も))
etc...
マーケティング × 行動経済学
このような行動経済学の考え方は、ビジネスの世界でも世界的に大きな注目を浴びています。特にアメリカでは、会社のマーケティング戦略を考えるために、心理学や行動経済学など人間のモチベーションを科学的に理解するための学問に大きな注目が集まっており、CBO(Chief Behavioral Officer 最高行動責任者)という新たな役職を置く企業も増えているようです。
保険業界でも、米保険会社の「Lemonade」で行動経済学の世界で有名なダン・アリエリー教授がCBOに就任し、保険の新たな枠組みを提唱しています。
(出典:「いまシリコンバレーで「AI(人工知能)×行動経済学」が最強なワケ」https://gendai.ismedia.jp/articles/-/57464)
我々「人の行動を考えよう!」チャンネルでも、理論を学ぶことはもちろん、自分たちの商品・業務に活かして保険をもっと良いものにしたい!という想いのもと、日々議論を重ねています!
第2回は、モノを保有する時の人の感情を勉強していこうと思いますので、お楽しみに!
【参考文献】
ダニエル・カーネマン『ファスト&スロー(上)あなたの意思はどのように決まるか?』 早川書房, 2014年
マッテオ・モッテルリーニ 『経済は感情で動く:はじめての行動経済学』 紀伊国屋書店, 2008年
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