【人の行動を考えよう!】人は自分が持つものを過大評価しがち!?

行動経済学研究チームによる連載第2回は、「自分が所有しているもの」に対して持つ「ポジティブ・バイアス」についてお話ししたいと思います。


ポジティブ・バイアスとは?


突然ですが、ちょっと想像してみてください。

あなたは、大好きな歌手のライブチケットの抽選に申込みました。

倍率はとてもとても高く、10回に1回当たるか当たらないか、それくらい大人気なチケットで、定価は7,000円です。

結果はなんと・・見事当選!

そんなあなたは、知合いから「お金に糸目はつけないからどうしても譲ってほしい」と懇願されました。

やっとのこと手に入れたチケット、あなたはいくらなら手放しますか?


ではここで一旦、頭をリセットしてください。


あなたは、先ほどのチケットの抽選に残念ながら外れてしまいました。

諦めきれないあなたはネットオークションでチケットが売られていないか探します。

定価より高くなっているであろうそのチケット、あなたはいくらまでなら払いますか?


そのライブによってあなた得られる効用(すきな歌手の生演奏を聞けるわくわく感や会場の一体感、代えがたい思い出など)は、チケットの当選の可否に関わらず同じですので、合理的に考えれば、売る際の希望額と買う際の希望額は一致しているはずです。


それでは、先ほどの想像ではどうだったでしょうか?

売る時の希望額が、買う時の希望額を上回っていたのではないでしょうか?


人間には、自分が所有するものに対して高い価値を感じ、手放すことに抵抗を感じる心理が働くと言われています。行動経済学ではこの心理を「ポジティブ・バイアス」もしくは「保有効果」と呼びます。

一度チケットを所有することで、手放したくない気持ちが大きくなり、主観的な価値が無意識に高まっていた!というのがこの乖離のカラクリになります。


※チケットの違法売買は厳禁ですので、読者の皆さんはルールを守ってくださいね!



人はなぜ「ポジティブ・バイアス」を持ってしまうのか?


このバイアスは3つの人間の不合理なくせに由来するものと言われています。

▶1つ目のくせ:「自分がすでに持っているものにほれ込んでしまうこと」

 例えば、自分のこどもやペットは周りと比べて特別にかわいいと思いますよね?これは所有による愛着によって、主観的な評価が歪められていることの良い例です。

大切にしてきた愛車を売る時、査定金額が思ったより低くてガックリするのもこのくせによるものです。

▶2つ目のくせ:「これから手に入るものではなく、失うかもしれないものに注目してしまうこと」

人間には、利益から得られる満足より同額の損失から得られる苦痛の方が大きいことから、損失を利益より大きく評価する「損失回避性」という心理があると言われています。

「A:必ず100万円もらえる」「B:じゃんけんに勝てば200万円もらえる」選択肢を選べるとしたらどちらがいいでしょうか?期待値は同じですが多くの人はAを選びます。ここにも、無条件で所有している「貰える権利」を失いたくない損失回避性が働いています。

▶3つ目のくせ:「他の人(買い手)の視点が自分と同じと思い込んでしまうこと」

 マイホームを手放す時、あなたは建築時にこだわったポイント、例えば壁に空けたペットの通れる通路や、リビングが見えるダイニングキッチンが売却価格を高める要素になると思うのではないでしょうか?

 しかしながら、買い手はペットが嫌いかもしれませんし、料理の匂いが移りやすいダイニングキッチンはむしろマイナス要素と評価するかもしれません。自分がこだわる点を主観的にポジティブに評価してしまうくせは誰にもあるものと思います。


ポジティブ・バイアスを生かしたプロモーション


このポジティブ・バイアスを利用したビジネス(プロモーション)の一つが、いわゆる「おためし価格」です。

アップルミュージックが最初の3か月無料で聞き放題だったり、月額1万円のジムが初月2か月だったりすると、とりあえず申込みたくなりますよね。

最初は、「無料期間が終わったらやめればいい」という風に考えていても、1か月「所有」し使って慣れてくると、やめるのは当初の想定よりはるかに難しいことが多いと思います。

「満足できなかったら全額返金保証!」等のプロモーションも、ポジティブ・バイアスを上手く活用した例ですね!


あなたの近くにあるポジティブ・バイアス

「ポジティブ・バイアス」が強いと、人は所有しているモノを売却することが難しくなります。買い手(マーケット)の希望水準との間にどうしても乖離が生じるからです。


こうしたバイアスがありながらも「メルカリ」は何故流行っているのでしょうか?

自分の設定した販売希望価格が買い手(市場)にリアルタイムで評価されることで「ポジティブ・バイアス」が自然と矯正されていくのでしょうか?

「ポジティブ・バイアス」の切り口で、自分の身の回りのサービスや商品を観察してみると、新しい気づきや学びがあるかもしれませんね!


以上、第2回連載は自分の所有しているモノに対して感じる「ポジティブ・バイアス」についてのお話でした。次回の「第一印象が大切」です!お楽しみに!!


文責:松永


【参考文献】

ダン・アリエリー(熊谷淳子訳)『予想通りに不合理』早川書房, 2008年

ダニエル・カーネマン『ファスト&スロー(上)あなたの意思はどのように決まるか?』 早川書房, 2014年


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