【人の行動を考えよう!】 第一印象が大切っていうけど、なんで??

行動経済学研究チームによる連載第3回は、人やモノのもつ目立つ特徴によって他の評価も決まってしまう「ハロー効果」についてお話ししたいと思います。


「第一印象が大切」

~あなたはどう感じる?~

「そうだよね、そんなの当たり前じゃん」と思った方が多いのではと思います。では、なぜ第一印象が大切なのでしょう。


中には「メラビアンの法則」(相手に与える印象のうち「視覚情報が55%」と言われていること)を思い出した方もいるかもしれません。では、その印象が私たちのその後の行動や判断にどのような影響を与えているか、考えたことはありますでしょうか。


今回の記事では、「なぜ第一印象が大切なのか」、それを行動経済学の観点から解説します。


以下の状況を想像してみて下さい。


取引先で担当者変更があり、急遽引継ぎの挨拶に来てもらうことになりました。ただ、自分に次の予定があり時間がなく、一言の挨拶と名刺交換だけでその日は終えることとなりました。



さて、その新たな担当者の男性が、以下のAさん、Bさんだった場合のそれぞれをイメージしてください。


あなたはその人と今後一緒に仕事をすること(自分にとって大事な案件で依頼をすること)について、どのように考えるでしょうか。


【Aさん】

パリッとしたスーツを着て、綺麗に整えた髪の毛の男性が、明るく笑顔で挨拶をしてくれた


【Bさん】

若干しわの入ったスーツを着て、ぼさぼさの髪の毛の男性が、無表情でボソボソと挨拶をしてくれた

どうでしたか?

きっとあなたは、Aさんに対しては全体的にポジティブな印象を抱いたはずです。


例えば以下のように。

✔  きっと仕事もテキパキこなすんだろうな

✔  頼りがいがあるな、新しい案件が出てきたら、彼に依頼してみようかな


一方でBさんに対しては、以下のようなネガティブな印象を抱いたはずです。

✔ 仕事もなんだかパッとしなそうだな

✔ イマイチ頼りがいがないな、新しい案件を任せてしまっていいのだろうか



しかし、ここで冷静に考えてみてください。あなたはAさん、Bさんと、実際にはたった数分の挨拶しかしていないのです。


もしかしたらAさんは、(見た目が優秀そうでも)実は全然仕事ができない可能性があり、Bさんが(見た目は頼りなくても)実は非常に優秀で、自分を大いに助けてくれる可能性も十分にあるはずです。


しかしあなたは、Aさん、Bさんの実際の働きっぷりを知らないにもかかわらず、「第一印象だけ」でその人の他の一面(仕事のでき具合、信頼性)まで評価してしまったことになります。


ハロー効果
~自分の見たものがすべて~

このように私たちは、第一印象によって、ある人(モノ)について、自分の目で確かめてもいないことまでをポジティブに(もしくはネガティブに)思ってしまう傾向を持っているのです。


この傾向は「ハロー効果(Halo Effect※)」と呼ばれていて、ある人やモノを評価する際に、その見た目、声や話し方、その人の肩書きのような目立ちやすい特徴に引きずられて、他の特徴についての評価が(ポジティブもしくはネガティブに)歪められてしまうという、一種の認知バイアスなのです。


※Haloは「後光(聖人の頭上や後ろに描かれる後輪)」を意味しており、「ハロー効果」とはまさに、その人自身ではなく後ろから差す光(=目立つ特徴)によって全体が輝いてみえてしまうことを表しています。

他に具体例を挙げると、たまたま安い居酒屋で会ったおじさんと話している時、途中で大企業の社長と分かった途端急に身構えてしまったり、帰国子女だと聞いて会った人が(話したこともないのに)「英語ペラペラな人」に見えたりするのも、ハロー効果の影響と言えます。

会社の人事にも影響を与えていると言われております。例えば採用面接では、ほんの短い面接時間での印象が、全体的な評価を構成してしまう可能性がある訳です。

採用”される”側は、できる限り第一印象を良く見せることが大事になりますし、採用”する”側は、いかに「ハロー効果」に惑わされず本質を見極められるか、が大事になりますね。


ハロー効果とマーケティング
~どんなイメージを持たれたい?~

この「ハロー効果」ですが、マーケティングの世界でも一般的に活用されています。一番分かりやすい例はCMです。


爽やかなイメージのある俳優さんが、洗濯洗剤や柔軟剤のCMに起用されていると、私たちはその商品に「清潔感」があるように感じるはずです(まだ使ってもないのに)。


一方で、起用した俳優さん、女優さんで不祥事が起こると、その商品のブランドイメージが一気に悪くなってしまいます(だからこそCM放送はすぐに中止されるのです)。


これらも「ハロー効果」が前提となっていると言えます。


また他にも、口コミ評価が高かったり、雑誌やTV番組で取り上げられたレストランも、「美味しいお店に違いない」という印象が先行し、(他の評価が低い無名のお店よりも)行きたいと感じてしまうというのも同じです。


逆に、企業が新たな商品やサービスのマーケティングを行う際には、「その商品にどんなイメージを持たせたいか」を考え、そのイメージを想起させる広告やキャンペーンを行うことが重要、ということになります。


まとめ

~ハロー効果を活かそう!~

いかがでしたでしたか?

「第一印象が大切」ということの理由について、改めて納得していただけましたでしょうか。


気合入れたい合コンの時、初めて彼氏・彼女のご両親とお会いする時、お客様との初めての商談の時、どんな準備をすれば良いか、どんな振る舞いをすれば良いか、あなたはもうお分かりですよね?(見栄の張りすぎは逆効果なのでくれぐれもお気をつけを!)

 

また、あなたが新商品や新サービスを始めてお客様に使ってもらう時、どんなことに気を付ければ良いでしょうか。もしかしたら、その「第一印象」でその商品やサービスの命運が分かれる、というのも、あながち誤りではないのかもしれません。


最後に

~保険のイメージって?~

最後に少しだけ保険のイメージ(と筆者の所感)の話をさせて下さい。


 保険=「安心感」「信頼感」


ポジティブな要素でいくと上記のようなものが一般的なイメージかもしれません。「万が一の際に安心をお届けする」という保険のコアバリューを踏まえると、そのイメージは今後も非常に重要になってくると思います。



ただ、今後デジタル化の波が押し寄せ、激動の時代に突入していく今の時代、本当にそれだけで大丈夫なのでしょうか。


 「保険って面白い!」

 「保険の可能性ってこんなに大きいんだ!」

 「保険ってこんなワクワクするんだ!」


こういったイメージを持ってもらうことで、業界の垣根を超えたサービスや商品がどんどん生まれていく、そんな世界が来たらいいなと思いますし、実現していきたいと思っています。そのためには、どんな人材を抱え、どんなマーケティング・広報戦略をとるべきなのでしょうか。ハロー効果を活かした戦略は練れないのでしょうか。


是非、皆様のご意見も聞きたいと思っていますので、どしどしコメントいただければ幸いです!



次回の記事では、「過去の自分自身の判断が、想像以上に私たちの購買行動に影響を与えている」というお話をさせていただきます。お楽しみに!


文責:尾崎



【参考文献】

ダン・アリエリー(熊谷淳子訳)『予想通りに不合理』早川書房, 2008年

ダニエル・カーネマン『ファスト&スロー(上)あなたの意思はどのように決まるか?』 早川書房, 2014年


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